【ゲーム音楽制作】作曲上の注意点と音楽スタイルの選び方

ゲーム開発における音楽の位置づけ

ゲーム音楽は、演出や感情表現を支える役割を担い、ゲーム全体の完成度に大きく関わります。ストーリー展開、キャラクターの心情、戦闘シーンの緊迫感などを的確に伝えるために、企画段階から音楽の方向性を定めておくことが効果的です。設計段階で使用箇所や必要曲数を明確にしておくことで、その後の工程での調整が最小限に抑えられます。

作曲プロセスの基本的な流れ

ゲーム音楽の作曲は、以下のような段階を経て進行します。

1．ヒアリング・要件定義

まずは、ゲームディレクターやプランナー（ゲーム企画者）とミーティングを行い、ゲームジャンル、登場キャラクター、使用シーン、曲数などを明確にし、必要なイメージを整理します。

2．プロトタイプの制作とイメージ共有

1のヒアリングをもとに、ゲームをイメージした音楽のプロトタイプ（仮音源）を作成します。さまざまなシーンがあるゲームなら、シーンに合わせて何パターンか用意するのがベストです。

3．初稿制作とフィードバック

プロトタイプ（仮音源）をもとに依頼元の担当者様とイメージのすり合わせを行い、必要に応じてブラッシュアップします。必要があれば2から3の作業を繰り返し行い、イメージを詰めていきます。

4．楽曲量産

イメージが固まったら、曲を量産していきます。ただし、最低でも週に一度程度は途中経過を確認して貰い、お互いのイメージにズレが無いか確認することが理想です。

5．最終調整・納品

楽曲に問題が無いと確認された後は、ゲーム用のマスターリング作業（音質や音量等を調整）を行い、用途に応じたデータ形式で納品します。

情報共有と連携体制の重要性

スムーズな進行のためには、資料や制作環境の共有が欠かせません。世界観設定資料、シナリオ、開発中の映像などがそろっていることで、音楽の方向性がより明確になります。また、依頼元の担当者様とのコミュニケーションを定期的に行うことで、意思疎通の齟齬を防ぎ、制作期間の短縮にもつながります。

このように、ゲーム音楽の作曲は、開発全体で連携しながら進める工程であり、単独で完結する作業ではありません。各工程を正しく理解することで、制作側と依頼元との連携もより円滑になります。

ゲームジャンルと音楽の関係性を理解する

ゲームジャンルに応じて求められる音楽の性質は大きく変化します。テンポ、リズム、メロディ、楽器構成、音色の質感などを調整することで、プレイ体験との一体感を形成することができます。例えば、ストーリーテリングを重視するRPGでは情感豊かな旋律が好まれる一方、テンポ感の速いアクションゲームではリズム重視の音楽が効果的です。

ゲームジャンルごとの代表的な音楽スタイル

RPG（ロールプレイングゲーム）

感情の起伏や物語の奥行きを表現するために、オーケストラ調や民族音楽風の構成が多く採用されます。シーンごとに曲調を変え、移動・バトル・イベントなど各局面を引き立てるよう設計します。

アクションゲーム

プレイヤーの集中力を高めるため、リズム主体の構成や、ロックスタイルの音楽と電子音を多用したスタイルが一般的です。ループ構造を前提としながらも、印象に残るモチーフを短尺で繰り返す設計が好まれます。

ホラー・サスペンスゲーム

環境音や不協和音を取り入れ、不安感や緊張感を演出する構成が効果的です。あえて静寂を挟むことで、感覚的な演出を強調する手法も用いられます。

外注先との共有に役立つ3つの視点

ゲームの世界観・時代設定の共有

ファンタジー・SF・近未来など、作品の時代背景に応じて音楽の方向性も大きく変わります。使用する楽器やジャンル選定の参考情報になります。

プレイヤー心理の導線設計

演出したい感情（緊張感・高揚感・安心感など）を明確に伝えることで、音楽側での構成に反映できます。

ゲームプレイのテンポと一致させる視点

操作の速度や画面展開のテンポとBGMのリズムが一致していると、プレイ中の没入感が高まります。

音楽スタイル選定に関するこれらの視点をあらかじめ整理しておくことで、制作会社への依頼時にも意図が明確になり、理想的な音楽制作につながります。

必要な音楽の長さ

ゲームではシーンによって、その長さはまちまちです。重要なシーンではじっくりと聞かせるために数分の長さが必要になるかもしれませんが、シーンによっては十数秒間しか音楽が流れない場合もあります。作曲を始める前に演出意図を良く理解しておくことも重要です。

ループ構造を前提とした作曲設計

多くのゲーム音楽では、プレイ時間に応じて一定区間の音楽が繰り返し再生されるループ構造が採用されます。再生のつなぎ目で違和感が生じないよう、旋律・コード進行・リズムの終始を丁寧に設計する必要があります。また、ループに適した尺や展開構成を意識することで、長時間の再生においても聴き疲れを軽減できます。

インタラクティブ音楽による演出強化

近年では、プレイヤーの行動やゲーム進行に応じて音楽が変化する「インタラクティブ音楽」が多く取り入れられています。バトル中の攻撃状況や、マップ移動時の環境変化などに応じて、複数の楽曲をシームレスに切り替える手法が求められます。そのため、各トラック間のテンポ・キー・質感の統一が重要となり、通常のBGM制作とは異なる構成技術が必要です。

音質と容量の最適化

コンシューマゲーム機なのか、PC向けなのか、スマートフォン向けなのか、またはマルチプラットフォームなのか、ゲームプラットフォームによって、使用できる音源フォーマットや容量制限が異なる場合があります。高音質を維持しつつ、適切な圧縮とデータ設計を行うことで、限られたリソースの中でも表現力を損なわずに納品することが可能です。シーンによっては、モノラル音源や短縮版の活用も効果的です。

没入感を支える演出との連動

音楽は単独で聴かせるものではなく、画面演出・効果音・UIの動きと連動することで没入感を最大化します。特定のタイミングで音を減衰させる、シーン移行に合わせて転調させるなど、演出意図と密接に連携した音楽設計が求められます。制作段階から、演出チームとの連携体制を整えておくことが重要です。

このようなノウハウを押さえることで、ゲーム音楽はプレイヤーの体験を補完するだけでなく、記憶に残る作品として完成度を高めます。