ゲームサウンドに深みを与える効果音の制作方法|現場で求められる音素材活用術を解説
ゲームサウンドは、映像や操作と連動してプレイヤーの体験を支える要素の一つです。特に効果音は、キャラクターの動きやUI操作、環境演出などに深く関わり、作品全体の印象を左右します。直感的に伝わるサウンドを制作するには、音の役割を理解し、目的に応じた技術を活用することが重要です。
こちらでは、ゲームサウンド制作の基礎として、効果音の設計手法、シンセサイザーによる音作りのポイント、さらに音素材の選定と活用について解説します。
効果音制作に必要な基本知識

ゲームにおける効果音は、画面上の動作や演出にリアリティと臨場感をもたらす役割を担います。UI操作音や環境音、キャラクターのアクション音など、各種効果音はプレイ体験そのものの質に直結します。音が自然であるほど、プレイヤーの没入感は高まり、逆に違和感のある音は世界観を損なう要因となります。
以下では、効果音の制作に必要な基本知識と、音づくりの基本的なプロセスを整理します。
効果音の作り方
効果音の制作には、主に以下のような工程があります。
1.サウンドの目的とタイミングを設計
画面内のどの動作や状況で、どのような音が鳴るのかを明確に定義します。効果音の意味づけが曖昧だと、演出として機能しません。もちろん、ゲームディレクターやプランナー(企画者)、デザイナーとも音の方向性について打ち合わせをする必要があります。
2.音のイメージを具体化
打ち合わせやディスカッションを通じて、「軽快なボタン音」「派手な爆発音」など、目的に応じた音色や質感の方向性を決めていきます。
3.素材の収集・録音・合成
決められたイメージに沿って音を制作していきます。求められる音の種類に応じて、
録音(フォーリー収録)や既存素材の活用、シンセサイザーでの音作りを通じて、必要な音素材を集めます。
※フォーリーとは、日常的な音など実際に人が動いて収録する音素材の事です。
4.編集と調整
複数の音を重ねたり、エフェクト処理を加えたりして、最終的なサウンドに整えていきます。
5.納品に向けた最終調整と確認
クライアントへの納品形式に合わせ、音量やファイル形式の最終調整を行います。ゲームでの使用を想定し、仕様に沿っているか、音質に問題がないかなどを最終確認します。
音の機能性と世界観の整合性を両立させる
効果音は、単に「音が鳴る」だけでは不十分です。ユーザーインターフェースとの一貫性や、ジャンルや世界観に対して違和感がないかといった観点からも検証が必要です。例えば、近未来SFに柔らかすぎる環境音は没入感を損ないます。視覚情報との整合性を意識した音設計が大切です。
音の素材を扱うための基本スキル
効果音を構成する素材は、録音データ・既製音源・シンセサイザーによる生成音など多岐にわたります。それぞれの素材を扱うためには、以下のような基本スキルが必要です。
- DAW(Digital Audio Workstation)※操作の習得
- フォーリーなどの録音技術
- 波形編集とノイズ処理の基礎知識
- 音量や定位などのミキシング技術
- 短時間で聴き手に意図が伝わる構成力
※効果音の制作では、ProToolsやAdobe Auditionなどのソフトを主に使います。
これらのスキルは、単体で音を整えるためだけでなく、「他の音との関係性」を前提とした設計にも直結します。
目的に応じた制作手法を選ぶことが重要
演出の規模や開発リソースに応じて、効果音制作には複数のアプローチがあります。既製音源を加工して使うのか、フィールドレコーディング(屋外で録音)を行うのか、シンセサイザーで一から設計するのかによって、制作効率や音の自由度は大きく異なります。目的に最適な手法を選択することが、効果的かつ効率的なサウンド制作の鍵となります。
シンセサイザーを活用した効果音制作

効果音制作において、シンセサイザーは音をゼロから構築できるため、非常に強力なツールです。特に、UI音やSF的な電子音、環境音など、抽象度が高く汎用的な音を制作する場面では、シンセサイザーによる音づくりが効果を発揮します。
以下では、実務に役立つシンセサイザーの使い方や基本設定、効果音制作における応用ポイントを解説します。
シンセサイザーとは
波形を合成することで人工的な音を作り出す機材やソフトウェアを指します。アナログシンセとデジタルシンセがありますが、近年ではDAWと連携して使用できるソフトシンセの利用が主流です。
シンセサイザーの音は「波形(VCO)」「フィルター(VCF)」「アンプ(VCA)」「モジュレーション(LFO)」など複数の要素によって構成されています。これらを調整することで、多彩なサウンドを自在に設計できます。
効果音制作に向いた基本波形の選び方
効果音に適した波形は、用途によって異なります。以下は代表的な波形の特徴です。
- サイン波(Sine):柔らかく丸みのある音。通知音や環境音に向く
- 矩形波(Square):明るく硬質な音。UI操作音に適する
- ノコギリ波(Sawtooth):鋭く派手な音。機械的な演出やSF系に合う
- ノイズ(White/Pink Noise):爆発音や風音など、自然音のベースになる
これらの波形を、加算、減算、乗算して、組み合わせて加工することで、音のバリエーションを自在にコントロールできます。
フィルター(Filter)で音色を調整
フィルターには、ローパス(Low Pass Filter)・ハイパス(High Pass Filter)・バンドバス(Band Pass Filter)などが有ります。これらは指定した周波数帯を通し、それ以外をカットして、音色を調整することができます。
エンベロープ、LFOとフィルターで音の表情をつける
シンセサイザーの設定で特に重要なのが「ADSRエンベロープ(Attack,Decay,Sustain,Release)」とLFO(Low Frequency Oscillator)です。音の立ち上がりや余韻など、時間的な変化をコントロールするこの機能により、音の性質が大きく変化します。
- Attack:音が出始めて最大音量に達するまでの時間
- Decay:最大音量から安定レベルに下がるまでの時間
- Sustain:キーを押している間の持続音量
- Release:キーを離した後に音が消えるまでの時間
さらにADSRとLFOは、フィルターに使うことで、よりダイナミックな音色を作り出すことができます。
制作スピードと精度を両立するために
シンセサイザーでの音作りは自由度が高い一方、設計の方向性を見失いやすいという側面もあります。そのため、事前に「どういう動作に、どんな質感の音を当てたいか」を明確にし、制作時間と手間のバランスを取ることが大切です。シンセサイザーの活用は、素材収集だけに頼らない、独自性のあるゲームサウンドを実現するための鍵になります。
ブレインストームでは独自ツールで効果音を作成しています
GraphArpgeggiator(現在非公開)という、グラフを描いて音を作ることができるツールを使い、これらのシンセサイザーのパラメータを自由に動かすことによって、一般的なDAWでは作りにくい効果音を作り出すことができます。
魅力的な効果音を生み出す素材の選び方
効果音の完成度は、使用する素材の質と選定センスに大きく左右されます。デジタルによる音作りが主流となった現在でも、自然音や環境音といった現実の音素材は、ゲームにリアリティや奥行きを与えるための重要な要素です。
以下では、ゲームサウンドの質を高めるために必要な素材選びの視点や、実務で意識すべき収集・管理のポイントを解説します。
効果音の「質感」は素材で決まる
同じ動作を表現する音でも、使用する素材の選び方次第で印象は大きく変わります。例えば、剣を振る音一つにしても、金属音を主体にするか、空気の切裂音を混ぜるかで、リアルさや迫力に差が出ます。制作の初期段階で、演出意図に沿った素材選定を行うことで、後の工程での修正や調整の手間を抑えることができます。
録音素材とライブラリ素材の使い分け
音素材には、自ら録音した「フィールドレコーディング素材」と、市販・配布されている「ライブラリ素材」があります。
録音素材
人が動いて鳴らす音、環境音など、身近なもので録音できるものは、収録した音声で最適な音を作ります。
ライブラリ素材
銃声や爆発音、動物の鳴き声など、簡単には収録することができない音は、市販されている「ライブラリ素材」を利用します。
場面に応じて両者を使い分けることで、制作の効率と品質を両立させることが可能です。例えば、環境音や足音などの汎用音はライブラリを活用し、キャラクター固有の効果音などは録音ベースで独自に構築するのが有効です。
収録の際に意識すべきポイント
フィールドレコーディングを行う際には、以下のような点に留意することが重要です。
録音機材の選定
高感度マイクやリニアPCMレコーダーを使用することで、ノイズの少ないクリアな素材が得られます。
収録環境の確認
反響音や雑音が混入しにくい静かな場所を選定します。
ファイル管理
収録日時・用途・内容などを明記して整理しておくことで、後の編集工程がスムーズになります。
録音素材の品質は、最終的な効果音の仕上がりに直結するため、手間を惜しまず収録を行うことが求められます。
サウンド同士の相性を考えた素材選定
効果音は単体で存在するわけではなく、BGMや他の効果音と同時に鳴ることがほとんどです。そのため、個々の音の良さよりも「音同士がぶつからない」「音の帯域が住み分けられている」といったミックス全体での調和が重要になります。音素材を選定する際も、「その音が他の音と重なったときにどう聞こえるか」を前提に判断することがポイントです。
制作時点から実装環境を想定する
ゲームエンジンに組み込んだ後の再生環境を想定し、音素材はできるだけ実際の出力環境でテストすることが望ましいです。スマートフォンとPC、コンシューマー機では再生帯域や音の聞こえ方が異なるため、制作時点での最適化が求められます。素材が高音質であっても、実装後に音が埋もれてしまうこともあるため、事前確認を欠かさないことが品質向上につながります。
ゲームサウンド制作は目的に応じた音設計が鍵
ゲームにおける効果音は、単なる演出要素ではなく、世界観や操作感を支える重要な要素です。制作現場では、BGMと同様に、効果音にも設計意図や機能性が求められます。シンセサイザーを活用した音作りや、適切な素材選びを行うことで、プレイヤーにとって自然かつ印象的な体験を提供することが可能です。使用する機材や制作手法が異なっても、最終的な目的は「音でゲームに命を吹き込むこと」にあります。
株式会社ブレインストームでは、ゲーム開発の目的に応じたサウンド制作をはじめ、効果音設計や素材収録のご相談にも対応しております。ご要望に応じた柔軟な制作体制をご提案いたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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