没入感を高めるBGMとは?ゲームサウンド制作の流れと重要ポイントを紹介
ゲームをプレイしているとき、グラフィックや操作性に目が行きがちですが、実は“音”こそがプレイヤーの感情に最も深く働きかけている要素の一つです。特にBGM(バックグラウンドミュージック)は、プレイヤーの没入感や緊張感、感動といった「気持ちの流れ」を自然に誘導する大きな役割を果たします。
こちらでは、ゲームサウンド制作の基本的な考え方から、魅力的なBGMを制作するためのステップ、そしてジャンルごとの制作ポイントまで、実際に現場で活用されている知見をもとに詳しく解説していきます。
ゲームサウンド制作とは?その役割と重要性

ゲームサウンド制作とは、ゲーム内のあらゆる“音”を計画し、制作・実装するプロセスのことです。対象となるのは、BGMだけでなく、ジングル(Jingle)、効果音(SE)、環境音(アンビエンス)、キャラクターボイス、UI効果音など多岐にわたります。
中でもBGMは、プレイヤーが常に耳にしている音であり、「そのゲームらしさ」を強く印象づける重要な存在です。例えば、以下のような役割を果たしています。
プレイヤーの感情誘導
悲しい場面では哀愁漂うメロディ、ボス戦では緊迫感のあるアグレッシブな曲調など、BGMによってシーンの雰囲気を“感じさせる”ことができます。
世界観の定着
和風のゲームなら和楽器、近未来のゲームなら電子音など、音色の質感やアレンジによって世界観をより明確に表現できます。画面だけでは伝わりにくい細かなニュアンスを、音で補完することができます。
プレイ体験の最適化
テンポのよい音楽は操作感を向上させ、静寂を活かした構成は探索や恐怖感を引き立てます。心地良いサウンドの存在が、ゲームそのものの印象を大きく左右することもあります。
つまり、ゲームサウンドはグラフィックやシナリオと並ぶ“ゲーム体験を構築する三本柱の一つ”といっても過言ではありません。
魅力的なBGMを制作するための基本ステップ

ゲームBGMの制作には、単なる作曲スキルだけでなく、ゲームシステムや演出意図への深い理解が求められます。以下では、プロの現場でも実践されている基本ステップを、順を追って紹介します。
ステップ1:ゲームの世界観・演出意図の把握
まずは、開発ディレクターやプランナー(企画)と綿密にミーティングを行い、ゲームのジャンル、ストーリー、キャラクター設定、プレイ感などを深く理解します。資料があれば設定集・シナリオ台本・ビジュアルアート・動画などを参照し、サウンドの方向性を明確にしていきます。
例えば、「中世ヨーロッパ風のダークファンタジーRPG」なら、オーケストラ調+少し重めの旋律をベースに構築する、といった具合です。イメージした音楽のアイディアは、積極的にディレクターやプランナーに提案しましょう。最初のディスカッションが音楽制作の大きな助けになります。
ステップ2:ゲームBGMのイメージを考える
ディスカッションを受けて、ディレクターやプランナーのゲームへのイメージを掴んだ後は、音楽イメージを共有するために、ゲームをイメージした曲を作ります。所謂イメージボードのような曲で、ゲーム全体を通して、どのような雰囲気を音楽で表現したいかを開発者と共に共有します。複数のメンバーで作曲をする場合は、イメージ曲が非常に重要です。作曲家同士で共有して、アイディアを膨らませていきます。
ステップ3:シーンごとのBGM構成案の策定
曲のイメージが固まったら、次に、ゲーム内のどのシーンにどのようなBGMを用意するかを構成していきます。以下のような場面ごとに必要になることが多いです。
- タイトル画面/ホーム画面
- 通常の探索フィールド
- 戦闘シーン(通常・ボス)
- カットシーン(会話・イベント)
- ゲームオーバー/勝利時
- 店、拠点、休憩所などの静的シーン
それぞれのシーンで、本当に音楽が必要なのか?また、どの位の長さの曲が必要なのかなどを考えます。そして、流れる頻度の高い曲では、「繰り返し聴かれても疲れにくい構成」であることも重要です。多くのゲームでは、BGMはループ再生されるため、イントロとループとのつなぎ方にも工夫が必要です。
ステップ4:制作方法の検討
楽曲の方向性が固まったら、どのような方法で制作していくかを考えます。ジャンルによって制作手法は異なり、生楽器を取り入れた曲が良いか、すべてをDAWで制作するのかなど、楽曲の意図や予算に応じて判断します。また、曲によって具体的な録音方法を考えるのも大事な過程です。演奏をオーケストラに依頼するのであれば、譜面作成なども大事な仕事になります。
DAW(Digital Audio Workstation)で作曲を行う場合は、ソフト音源のプラグインなどを利用して、実際の作曲作業に入ります。近年では、非常に高音質なオーケストラをシミュレーションしたリアルな音源や、DAWならではの表現を追求したシンセサウンドも充実しており、ジャンルに応じた機材選びが楽曲のクオリティに大きく影響します。
ステップ5:ミキシング・ループ処理・納品形式の調整
作曲が完了し、ディレクターやプランナーの確認を経て承認が得られた後は、ゲーム内での使用を前提とした音質調整を行います。具体的には、ミキシングやマスターリングといった工程に進みます。これらは予算に応じて、レコーディングスタジオでエンジニアに依頼する方法と、すべてをDAW内で完結させる方法などがあります。
特にゲームでのミキシング、マスターリングでは、ゲームハード(コンシューマ機、PC、スマートフォンなど)に合わせたバランス調整が求められます。さらに、BGMが他のSEやボイスと干渉しないように、周波数帯や音圧バランスを丁寧に調整することが重要です。
また、ゲーム内で曲が途中からループ再生される場合に備え、ループポイントに違和感がないかをミキシングの最終段階で確認します。そのうえで、ループ可能なフォーマット(例:Ogg、WAVなど)で納品し、ゲームエンジン(UnityやUnrealなど)やゲームハードに適したファイルフォーマットへの変換を行います。
ゲームジャンル別にみるBGM制作のポイント
ゲームのジャンルによって、BGM制作の目的や手法は大きく異なります。以下では代表的な3ジャンルについて、サウンド制作の特徴や注意点を解説します。
RPG(ロールプレイングゲーム)
ストーリー重視のRPGでは、BGMもまた「語り手」のような役割を担います。
- キャラクターごとのテーマ曲
- マップの雰囲気を反映した探索BGM
- 感動的なイベントに合わせた劇伴風サウンド
これらを通じて、プレイヤーが物語により深く入り込めるよう構成されます。長時間のプレイを想定しているため、ループの自然さと聴き疲れしにくい構成が重視されます。また、最近ではシーンや場面が変わっても、途切れることなくシームレスの音楽が変化するインタラクティブミュージックなども多用されています。
アクション/シューティングゲーム
スピード感とテンポが勝負のアクションゲームでは、BGMのリズムやノリがゲーム体験に直結します。
- テンポの速いエレクトロやロック調が多い
- 操作感やゲームのスピードに合わせた爽快感を重視したBGM
- 変拍子や変調で緊張感を演出することも可能
音楽がプレイの“気持ちよさ”を左右するジャンルなので、ゲームプレイとの“同期感”や”一体感”を意識して制作する必要があります。
ホラー/サスペンス系
このジャンルでは、ゲーム内の演出と音楽の緊密なシンクロが特に重視されます。そのため、すべてのシーンで「音を鳴らす」よりも、あえて「音を鳴らさない」ことが、演出に深みを持たせることもあります。静けさの中で突然鳴るノイズや、遠くから聞こえる環境音がプレイヤーの恐怖心を掻き立て、音響による空間演出が重要な役割を果たします。
- プレイヤーを驚かせたい場面や安心感を与えたい場面では、BGMの音量を意図的に極端に調整
- 「この先に何かが起こるかもしれない」と予感させるような音響設計
- 単音の持続音、不協和音、ローパス処理などを用いて、不安感を演出
映画音楽的なアプローチが求められることが多く、SEとの連携も極めて重要です。
ゲームサウンド制作のご相談は株式会社ブレインストームへ
ゲームBGMの制作には、作曲スキルに加えて「ゲームそのものへの理解」と「プレイヤー体験への想像力」が不可欠です。そのうえで、ジャンルやシーンに応じた音の構成・テンポ・音色を最適化し、ゲームの魅力を最大限に引き出す必要があります。
株式会社ブレインストームでは、RPGやアクション、ホラーなど幅広いジャンルでのサウンド制作実績があり、テンポ・コード・メロディの設計から、ループ処理・ミドルウェア実装まで一貫対応可能です。ゲーム開発におけるBGM制作やサウンドディレクションでお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。ゲームに命を吹き込む音を、一緒に作りましょう。
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